点鼻薬との戦い2008/12/06 15:46

私の右の鼻の穴は、おそらく生まれつき狭いのだろう。そちらの穴が全然詰まらずに、それだけで生きるのに必要な酸素を取り込めるほどちゃんとしている状態は、基本的に点鼻薬をした直後しかない。しかし点鼻薬は長く続けると、鼻血が時々出たり、ノドがおかしくなったりする。そんなわけで点鼻薬をやめたくて、フコイダンという健康飲料に手を出した。

最近その成果か、ちょっと良くなって来たので、昼間はなるべく点鼻薬なしで我慢していることが多くなった(夜はさすがに鼻が詰まったままで寝ると全然疲れが取れないので…)。とはいえこれは、ほとんど一人で仕事しているからこそできることだ。もし隣で仕事をしている人がいたらしょっちゅう

「ぷはーっ、ぜいぜい」

という音を聞いているだろう。正直いつも半分詰まっているような状態で、しかも食べたものによってはほぼ両穴とも使用不能なほど詰まってくるので、口を閉じて仕事しているとときどき酸素が足りなくなるのだ。さらに、若干詰まった状態でギターの練習をしていると、難しいパッセージは口を開けてたくさん空気を吸わないと弾けないことが分かった。当たり前のようだけれど、演奏もやはり運動なのだなと納得している毎日だ。

早いところ点鼻薬と完全に縁を切りたいが、なかなかそうもいかない。というのも、フコイダンその他の健康飲料を毎月どれくらい飲むと順調に治っていきそうかが見えて来たのだが、その金額は最低でも月3万5千円くらい。

無理・・・

仕方ないので今は、飲まないよりはましなくらいをちびちび飲んでいる。それにしても毎月それなりにかかるのだが。

この状況を表す四字熟語として一番ふさわしいのは?

奮闘努力
戦意喪失
世ノ中金

新曲の初演が近づいて来た2008/12/10 13:56

月曜に成蹊大学に練習を見に行ったら、結構それなりにできていた。その場でいろいろまずいところを指摘した結果、最後には人に聴かせられる演奏に。ということで、今週の土曜日、夜に時間のある方は是非成蹊大学ギターソサエティーの定演を聞きに来てください。

***
第42回定期演奏会
2008年12月13日(土)
於 西東京市保谷こもれびホール
http://www.komorebi-hall.jp/
入場無料

■開場■
 16時30分
■開演■
 17時

■演目■
独奏
 アラビア風奇想曲
 リブラ・ソナチネ
 見上げてごらん夜の星を
 Ciel etoile
 Faire
 バーテンジャズ組曲

重奏・小合奏
 TICOTICO
 三千院
 紫陽花
 Over the rainbow

合奏
 威風堂々
 組曲『展覧会の絵』より 
  プロムナード
  ババ・ヤーガの小屋
  キエフの大門
 委嘱作品 飛翔
         ほか
***

3部の合奏が始まるのは19時くらいなので、ギ連のコンクールと両方聞く人は、17時半で切り上げて行けば問題ないでしょう。と、かくいう私が、その掛け持ちをする一人。でも17時半なら審査結果はともかく、全員の演奏は聞けるだろうということで嬉しい。

ちなみに今回初演する「飛翔」の部分、部分を、部員の練習のために音源にしたページがあります。ご興味のある方は是非聞いてみてください。
http://www.spiritmusic.net/seikei/

東京国際ギターコンクール20082008/12/15 01:21

さて、今年も二日間たっぷりと、指のちゃんと動く人たちのオーラを吸って来た!?


二次予選
今回は80点を基準として、そこから、技術的なミス、不安定さ、音楽的なミス、趣味の悪さが見えたら点を引いていき、素晴らしい表現があったら点を足していく形で採点してみた。すると結果はこうなった。

藤元 高輝(東京都) 83
Otto TOLONEN (Finland) 80
Xing ye LI (China) 77
You WU (China) 74
朴 葵姫(Korea) 73.5
Andras CSAKI (Hungary) 73
Jin Hee KIM (Korea) 72
Harold Gretton (Australia) 70
河野 智美(東京都) 70
Meng Yi LI (China) 69
Giuseppe FEOLA (Italy) 65
John COUCH (New Zealand) 59
Craig LAKE (Australia) 58
Samuel T. KLEMKE (Germany) 57
濱田  圭(兵庫県) 55


しかし、実際に本選に残った6人は
Otto TOLONEN
You WU
朴 葵姫
Andras CSAKI
Harold Gretton
Giuseppe FEOLA

藤元 高輝が残らなかった理由は推測できる。まずすべてが控えめでおとなしい表現だったこと。もしくは単に音量が小さかったとも言える。もうひとつは、たくさんの創意工夫をしていたが、ときどき(特にファンダンギーリョ)、それが単に思いついたからやってみた、というように聞こえていた。いわゆる小手先の技ということだ。他の「ここはこう弾くのが楽しいのだ」という形で「心」と結びついている箇所と比べると、明らかに「頭」だけで作っている箇所があった。ただ、私としては創意工夫のない人たちより、頭でっかちでもそれをした演奏の方が好きだ。特の彼のフーガはとても立体的で非常に良かった。本選で彼が、バッハのヴィオリンソナタ一番のアダージョとフーガをどう弾くのか、とても聴きたかった。

Xing ye LIが通らなかった理由は、逆にHarold GrettonとGiuseppe FEOLAが通った理由と結びついているだろう。私がHarold Grettonに低い点数をつけた理由は、彼のバッハが気持ち悪くて聞いていられなかったからだ。ロマン派的なバッハの解釈を嫌いというわけではないが、彼のそれは何と言うか、昭和歌謡? もしくは、単純に味付けの間違ったバタ臭い料理? そんな感じだった。一方Giuseppe FEOLAはフーガの中間部を歌心丸出しに、ほとんどすべての小節で一拍目を長くして、対位法的な立体感など何もない演奏だった。
Xing ye LIは、必要最低限、かつ効果的なアーティキュレーションを駆使して、決してそれ以上のことはせずにバッハを弾ききった。いわば、日本料理的な味わいと言える。
つまり、きっとこういうことなのだ。今回の課題曲であるバッハのフーガに関しては、味付けが控えめなのはダメで、濃い味であればそれが変な味でもよかったということなのだろう。

それでいいのか?という気がちょっとだけしないでもないが、まあそれなりに納得はできる結果だろうか。ちなみに二次予選の審査結果を審査員ごとにつぶさに見ていったところ、ごく一部に、いったいどんな審査基準なのか全く分からない人がいた。そういう人の点数でも審査結果が左右されるのが怖い。


<本選>
本選は課題曲を50点満点、自由曲を100点満点で考えてみた。
演奏順に書いていくと

朴 葵姫
非常に繊細な表現が生きた演奏。しかしブローウェルのソナタ3楽章では大胆さもかなり見せてくれた。惜しむらくは、あちこちに押さえきれなかった音、左右のタイミングが合わなかった音が多すぎたこと。
39+79=118点

Harold Gretton
彼はとにかくすべてをロマン派的なスタイルで弾くようだ。コストの演奏会用ロンドは、本領発揮という感じでとてもよかった。そして、予選のときのようにバッハも同じように弾くのかと思っていたら、本選のバッハはBWV998のプレリュードだけ。この曲なら彼のスタイルでも何とか聞ける。他の曲だと、二次予選のときのように胸焼けがしたことだろう。もう一曲はホセのソナタ。3楽章がちょっと単調すぎたり、何かとすぐに盛り上がって、それ以上は盛り上がれずにフォルテのまましばらく突っ走るなどというところはあるが、基本的にメカニックが非常に高いのを印象づけた。
38+84=122点

Otto TOLONEN
予選は非常に良かったのだが、本選はどうしたのだろう。ハンガリー幻想曲、内なる思いといったメカニックをアピールする曲を選択している割には、メカニックが強くない。課題曲もかなり投げやりな、どうでもいい感じで弾いているように聞こえた。
35+74=109点

WU You
強弱を非常にうまく使い、フォルテに行く感動を味あわせてくれる演奏。アーティキュレーションも非常にいい。課題曲は間違いなく一番うまかったと言える。しかしバッハのBWV997のジーグ・ドゥーブルが、基本的に冴えない感じで、さらにドゥーブルの途中で忘れて止まってしまい、弾き直した。また、リョベートのソルの主題による変奏曲では、一部に「そこまで速くしなくてもいいだろう…」という箇所も見られた。とは言え、それらを差し引いても、私は彼の演奏が一番好きだった。
47+78=125点

Andras CSAKI
非常にバランスがいい。ジュリアーニの英雄ソナタは、とても正統的な古典だった。またバッハのBWV997からプレリュード、ジーグ、ドゥーブルを弾いていたが、プレリュードはダメでもジーグ、ドウーブルは結構いい出来だった。全体的に時代によって弾き方をちゃんと変えていたことが、ごく普通のことでありながら印象的。何しろ他の人は、自分の得意分野の偏った選曲で、時代の違いを感じさせずに弾く人が多かったから…。とは言え、特に優れた表現があったわけでもなく、それほど高い点はあげられなかった。
37+83=120点

Giuseppe FEOLA
ド=ヴィゼーの組曲ロ短調は、ちゃんと装飾音を考えて、それなりに弾いていた。昨日の変なバッハに比べるととても正統的な演奏と言える。しかし、時代様式を踏まえて装飾音に凝っている割には、今ひとつ単調な気がした。その後、ソルの魔笛はそれなりにこなしたが、最後のロドリーゴ、ソナタジョコーサがいまいちだった。2楽章は本選の演奏の中で一番退屈だったかも。
36+77=113点

ということで、私の予想順位は
1.WU You
2.Harold Gretton
3.Andras CSAKI
4.朴 葵姫
5.Giuseppe FEOLA
6.Otto TOLONEN

しかし実際は
1.Andras CSAKI
2.Harold Gretton
3.Otto TOLONEN
4.Giuseppe FEOLA
5.朴 葵姫
6.WU You


まあ、途中で止まった人が一位になるのもいかがなものか、とは思っていたが、WU Youの順位がここまで落ちるとは思わなかった。またOtto TOLONENが意外に上に来たのも予想外。この2点は正直言って不満だった。

結果から考えると、今年の審査のいろいろな面が見えてくる。

一芸に秀でた人よりも、まんべんなく結構な完成度で弾いた人の方が上だ。
細かいミスはほとんど審査に響いていない。
しかし、止まるという、誰にでも分かる間違いは結構まずい。
繊細な表現は下に見られる。
音色感の少ない演奏は不利だ。

というように、そういう風に審査した人たちの考えは分かるのだが、私はAndras CSAKIよりは、WU YouかHarold Grettonのリサイタルを聞きたい。彼らの演奏は結構退屈な時間もあるだろうが、どこかに感動をもたらしてくれる部分を含んでいるだろうという期待がある。

東京国際に思うこと2008/12/19 01:11

今日友人と、自分の曲の中でも特にお気に入りである「ラヴェルの墓」について話していた。彼が「それはWU Youだったらうまく弾きそうな感じの曲か」と聞いたとき、私はちょっと考えた末に「彼ではすべてを表現できないだろう」と答えた。強いて言えば、一楽章をOtto TOLONEN、二楽章をAndras CSAKI、三楽章をWU Youが弾いたら、かなりいい演奏になることだろう。

この前の本選はみな、いいところもあり悪いところもあったと思う。そこでどうだろう。ここで審査基準をあげて、今回のみんなのいいところを併せ持った人だけをこれから一位にするというのは。きっと、というかほぼ必ずしばらくの間一位は出ないだろうが、そのうちにコンクールの格があがって行く。そして数年後、東京国際で一位になった人は、世界からひっきりなしに呼ばれることになるだろう。

どうだろう?

新譜が出版された2008/12/26 23:19

ギター二重奏の「Guitar」がホマドリームから出版された。でだしはこんな感じ。
http://www.asahi-net.or.jp/~qr7s-tmym/MP3/Guitar.aif.mp3

難しくない曲なので、是非たくさんの人に弾いてもらえればと思う。