いろいろ2011/10/01 21:15

最近Twitterにつぶやくだけで、こちらを書いていませんでした。いろいろ書いてみます。

武満徹さんの歌曲《小さな部屋で》と《三月のうた》をギター伴奏にアレンジしました。自分でもなかなかギターらしく、うまく行ったと思います。2年前だったらこういうアレンジはできなかったでしょう。11月19日(土)に文京シビックホール 小ホールで、谷辺昌央さんが弾く予定です。
http://www.b-academy.jp/event/detail_dyn_j.html?iid=1517

The Summer Islands(松田弦&新井伴典)を聞きました。この二人の合わせは見事ですね。個性の違う二人の合わせというのではなく、二人で完全に一つのものを作るようなデュオ。音色も似ていてどちらをどちらが弾いているのかわからないくらいです。全体に聞きやすい曲を並べているのに、聞き飽きない、なかなか楽しいCDでした。

アマゾニコのコンサートに行きました。それぞれの演奏は相変わらず面白かったけど、今回とてもいいと思ったのは5重奏でした。今までに数回聞いたアマゾニコの重奏は、それぞれがバラバラに、たまたま同じ曲をやっているみたいな感じでしたが、今回はちゃんとアンサンブルになっていました。弦君が留学で抜けてしまうということで、練習に気合が入ったのでしょうか。

来年3月のデビューコンサートのプログラムをずっと考えていて、数曲を人前で試し彈きしてみたりしていたのですが、チラシ印刷の間際になって結構変えました。他人の曲でプログラムに載せるのは当初、バッハの《シャコンヌ》とメルツの《コンチェルティーノ》の予定でしたが、《シャコンヌ》は止めて、チェロ組曲6番の《プレリュード》にしました。この曲をこのコンサートで弾くのは、自分にとって非常に大きな意味を持つのですが、それについてはまた今度じっくり書きます。

ビートルズの《Black Bird》をギターソロにしてみました。ちゃんと弾けるようにしてYouTubeにアップしたいのですが、最近はデビューコンサート以外の曲を練習する暇がありません。okayanがアレンジした《天国と地獄》を自分なりにアレンジし直したものもあったりしますが、その練習まで手が回らない…。

一週間ほど前にFaceBookを始めてみました。まだ使いどころがよくわかっていませんが、もっか最大の悩みは、他の人が私を検索できないと言っていること。二人から言われたので、一旦友達しか検索できないようにしてログアウトし、もう一度ログインしてすべての人が検索できるように再設定してみたのですが、今検索できる状態なのかどうか。みなさんよかったらSiyoh Tomiyamaで検索してみてください。

あとは、元麻布の「一切合切、太陽みたいに輝く」というとても良い店を教えてもらったり、品川で古酒を専門とするお店「酒茶論」に行ってみたり、寿司屋で面白いイタリア人と出会ったり、いろいろな人におごりまくったり、軽井沢でバーベキューをしたり、風邪を引いたり、ハードディスクが突然いかれたりなど、いろいろあった今日この頃でした。ハードディスクの中身はまだ完全に復旧していません。MacとWinのOSを入れて、それぞれを最新にアップデートするだけでも結構な時間。これからたくさんのアプリケーションを再びインストールしなければならないのです。うー。

今村泰典さんの公開レッスン2011/10/08 00:12

日曜日、今村泰典さんの公開レッスンを聞いた。ためになったことはなったのだが、ちょっと残念だったのは、レッスンのかなりの時間が和声を主体とした楽曲分析によるものだったこと。正直そこら辺は、作曲のレッスンでかなり叩きこまれたし、私でもレッスンが可能なので。バロックらしいアーティキュレーションについても、特に新しく得るものはなかった。

バロックらしいアーティキュレーションを最初に習ったのは、作曲のレッスンでバッハの二声のインベンションをすべて楽曲分析した時だった。その後も古楽を専門とする人たちと付き合い、いろいろな本を読むうちに、バロックらしいアーティキュレーションは自然に身についていたらしい。

非常にためになったのは、装飾音に関するいくつかの指摘、特にイネガルの感じ方と、舞曲らしい弾き方だ。ここら辺はまだまだこれから学びたい。できればそういったことだけに特化した公開レッスンがあるといいのだが。それは自分でレッスンを受けるしかないか?

明日は重奏フェスティバルで藤井眞吾さんの曲が初演される。明後日はスペインギターコンクール。今月はギターのイベントが多い。

第29回スペインギター音楽コンクール2011/10/10 20:13

二次予選の課題曲は、タレガの《アラールの華麗なる練習曲》。数年前クラシカルギターコンクールの課題曲となったときと比べると、全体の技術が上がっていることを感じた。この小難しい一曲だけの課題曲を、大きなミス無しに弾き切るのはもちろんのこと、それなりに表情もないと、もはや本選に行けないようだ。

二次予選を聞いて、自分的に点数をつけた中から上位15人を選ぶとこんな感じ。

秋田勇魚
藤原盛企
門馬由哉
原秀和
中峰絵理果
藤澤みずき
五十嵐紅
伊藤亘希
谷川英勢
長祐樹
斎藤里枝
奥野隆
片根柚子
三次浩之
田中春彦

この中から本選に通ったのは最初の5人。そして6人目はなぜか、このリストにはいない、私は22番手でつけた森湧平だった。

ここで森を本選に通したのはまさにスペインギターコンクールらしいと言えよう。彼の演奏は、まず張り裂けそうなほどのフォルテでドカドカと始まり、ギターのまともな音を出すことはできないのではないかと思えるほど、つぶれ気味の音がずっと続いた。しかし同じフレーズがまた出てきたときには音量を落とし、まともな音も出せることを示してきた。その後も汚い音と普通の音が代るがわる出てきて、変に間を空けたり、一般的なクラシックの演奏から考えると非常に異端といえる演奏。なので私は彼を低く評価したのだが、誰よりも何かを強く表現しようとしていたのは確かだ。そしてそういった姿勢が評価されるのが、スペインギターコンクールの特徴なのかもしれない。

彼の演奏を聞いていてふと、クラシカルギターコンクールの際の笹久保伸の演奏を思い出した。笹久保が今回のコンクールを受けたら、あのときと同様な演奏をしても本選に残ったのかもしれない。逆に言えば、森が今回と同じ演奏をクラシカルギターコンクールでしたら、きっと本選には残れないだろう。それだけこの2つのコンクールは性格が違うと思う。

それはさておき、本選の感想に移ろう。

本選の最初は中峰絵理果。昔のようにガンガンと弾くのではなく、柔らかさが出てきているように思う。課題曲の、ソルの《マルボローの主題による変奏曲》では、ど忘れでちょっと大きなミスをしてしまったが、おおむね当たり障りなく進行していった。ただ、かなりあっさりした表現の中で、終始をやたらともったいつけて和音をずらしたりritをしたりするのは、説得力のないちぐはぐな音楽をやっている印象を与えていたのではないだろうか。
自由曲の《アルボラーダ》では、音楽とは関係のない、技術的な間が目立っていた。《ファンダンゴ》でも今ひとつ振るわず、若干焦り気味で一所懸命弾いている感じを受けた。

藤原盛企の課題曲は、最初は良い感じだったが、若干技術的に不安定な部分が見えたり、左手の雑音も少し気になる演奏だった。自由曲、トロバの《ソナチネ》は、バリバリと見事に弾いていたものの、この曲が要求する「粋」でおしゃれな感じが出ていなかったように思う。

秋田勇魚の課題曲は非常に良かった。全体に清楚な、決してやり過ぎない感じの表現。第三変奏ではとてもよいアーティキュレーションを見せていた。彼には他の出場者たちと決定的に違う所がある。それは「間」だ。彼の間のとり方は非常に自然で心地よく、まだ若いのに大人びた演奏に聞こえる。自由曲の《内なる想い》は、多少ほころびはあったものの、なかなかしっかりした演奏だった。

森湧平は予選の演奏から予測したとおり、とても独特の演奏だった。ルバートや極端な強弱などを多用し、これはもはや古典音楽ではなくロマン派の音楽と言えるくらい、終始自由に表現していた。自由曲《コンポステラ組曲》は今までに聞いたことのないほどガンガンと、プレビュードですらとにかく差し迫ってくる感じで、きめ細やかさとは無縁の演奏だった。

原秀和の課題曲は、何の工夫も見られなかったといっても過言ではないだろう。どういった音をレガートにして、どういった音をノンレガートにすると古典らしくなるか、和声をどう弾くと古典らしくなるのか、もっといろいろ考えて欲しいものだ。自由曲の《祈りと踊り》はもともと本人が消化しきれていないだろうと思われる演奏。また、随所にメカの不安も見えていた。

門馬由哉の課題曲はなかなかよかった。随所でとても古典らしいアーティキュレーションを見せ、いろいろな工夫もある。私としては非常に好きな演奏だった。《ファンダンゴ》《スケルツォ・ワルツ》では、少し音楽的に違和感を感じるところがあったり、仕上げが甘いと感じる所があったりはしたが、なかなかの好演だったと思う。


さて、全員を聞いてから私が出した順位はこれ。

門馬由哉
秋田勇魚
中峰絵理果
森湧平
藤原盛企
原秀和

しかし実際の順位はこちら。
秋田勇魚
門馬由哉
森湧平
藤原盛企
中峰絵理果
原秀和

秋田と門馬はかなりタイプが違い、お互いに相手にないものを持っている。この二人のどちらが一位をとっても納得だ。審査講評によると、私が気に入った、課題曲の創意工夫が、逆に審査員にはやりすぎだと嫌われたようだ。

中峰、森、藤原の順位が入れ違ったのも、まあ、そう言われてみればそれでもよいかという気がする。自分がつけていた点数で、この3人はほとんど点差がなかった。

ちなみに来年の本選課題曲は《アルハンブラの思い出》だそうで。再びクラシカルギターコンクールでとりあげられたばかりの課題曲。これは意識的に真似しているのだろうか。

久々に面白い現代音楽を聞いた2011/10/31 03:13

先日、とても満足度の高いコンサートを聞いた。
「佐藤紀雄&山田岳 ギターデュオリサイタル」

最初のジャック・ボディ「アフリカン・ストリングス」は、アフリカで実際に打楽器で演奏されるのを採譜したという曲。つい最近東邦の日本音楽専修・ギター専修設立10周年コンサートで、琴とギターによる演奏を聞いた。そのときに結構面白い曲だと思ったものの、同種の楽器でやらないと本当の面白さは出ないように感じた。そしてそれを今回、オリジナルのギター二台で聞いて、こちらの方がやはりはるかに良いと思った。

次の向井耕平「4つの詩曲」はスクリャービンの神秘和音を用いて何ができるかを模索したという曲。とてもきれいな曲だった。その後のエベルト・ヴァスケス、スコット・ジョンソンの曲は、まあそういうのがプログラムに載っていてもよいかという感じ。

そして最後に初演された、中谷通の「2_1/64_1」という曲。これが最高だった。作者の説明によれば、ピッチと律動の周期を一つの系列から導き出して相互に関連付けようとするもの。詳しい理論は省くが、一日をひとつの周期として、そこから計算して必要な音程とテンポを導き出すみたいな感じ。結果としてオクターブを41音に割った微分音ばかりの音階ができるが、それらをみなハーモニクスによる倍音列の高次の音程で実現するのだ。

まあとにかく、出てきた音は最初聞いているとガムランみたいに思えた。そしてずっと聞いていると、なんか、気を感じた時と同様に両手のひらがじんじんとしてきて、とても心地よい音楽だったのだ。演奏時間が22分もあったとは思われないほど、気持よく聞けた。

自分にとって現代音楽は、最悪から最上のコースまで4段階に分かれる。

1.新しいことをやっているだけで、全くつまらないもの。
2.最近の技法は使っているものの、特に目新しいことはやっていないし、つまらないもの。
3.最近の技法は使っているものの、特に目新しいことはやっていないが、そこに美を感じるもの。
4.新しいことをやっていて、そこに美を感じるもの。

こんな風に分かれるが、1,2のタイプの曲が多かったため、かなり暫くの間そういったものは聞かないできた。しかし最近また少し聞くようになって、3のタイプを何度か聞いたが、4のタイプは本当に久しぶりに聞いた。「2_1/64_1」が再演されたら、もっとたくさんの人に聞いてもらいたいものだ。

ちなみに私はこういった方向の曲を一時期だけ書いたが、今は全く書いていない。でも、少し書いてみたくなってきたかな。ただ、伝統音楽にどっぷり浸かっているように見えるOp.1の「バッハ風のコラールを主題とする組曲」においても、自分なりに新しいことはやっていたのだが。今でも自分には新しい試みに見えるし、同系統の音楽を特に聞いたことがない。ただ、その新しさをわかってもらえる人は少ないだろうな…。