初めての抽選2012/08/02 02:15

今日、初めてホールの抽選に行って来ました。会場には50人ほどのライバルが。しかも目的の土曜日は、予約受付前から区の行事で、すでに2日埋まっているし。

でも、くじ運のない自分の番号が5番目に呼ばれたときには、土曜日が取れなくても、祭日を取れるかもとか思っていました。ところが早速最初の人が、ここの金曜日から月曜の祭日までとか、連続して4日取ってしまい、3番目の人がもう一つの土曜日を取った時点で、土曜日・祭日枠はあっけなく終了…

ということで、また金曜日になってしまいましたが、今度の場所は便利です。中目黒駅から一分の場所にある中目黒GTプラザホールで2013年2月1日(金)に、再び自作だけのコンサートをやります。共演予定者は今のところ、オカリナの小山京子さんと、ギターの小暮浩史君。まだ先の話ですが、是非心に留めておいていただけると嬉しいです。
http://www.persimmon.or.jp/

ところで今日は道がとても空いていて、池袋から20分で帰って来れました。みんなは朝までコースかな。

オカリナ・ギターの新作初演2012/08/06 23:49

‎8/25(土)に飯綱ムジカフェスタのプレコンサートがありますが、そこでオカリナとギターのための「あこがれと祈り」Op.44が初演されることになりました。お時間と興味のある方は是非聞きに来ていただけると嬉しいです。

飯綱ムジカフェスタ・プレコンサート(アプリコ小ホール)
18:45開演 入場料 2,000円

2012年第37回GLCコンクール2012/08/07 21:58

今年は本選のタイムキーパーだったので、じっくり聞いて、しかもメモを取ることが出来た。そのメモを元に雑感を。まずは結果をざっと書こう。

小学生低学年(1~3年生)
1位 石井 嘉人
2位 降旗 友也
3位 井野 慧子       

小学生高学年(4~6年生)
1位 原田 斗生
2位 坂本 和奏
3位 近藤 祐月         

中学生
1位 飯野 健広
2位 藤原 開人
3位 片根 柚子
         
高校生
1位 菅沼 聖隆
2位 星野 瑞紀
3位 中村 朔也

大学生
1位 門馬 由哉
2位 伊藤 亘希
3位 森 湧平

もっと詳しい結果が、GLCのHPにある。
http://glc-guitar.com/competition/performers/2012.html


低学年、一位の石井は、ビーニャスの独創的幻想曲を弾いた。正直、トレモロもアルペジオもまだ指ができていなくてダメだったが、かと言って他の人ができたかというと、それぞれが自由曲なのでわからない。他の人達はもっとずっと易しい曲に挑んでいたのだ。彼は一番難しい曲に挑んで、細かいことを抜きにすると、それなりのエンターテインメントを作っていた。それが評価されて一位だったのだろう。二位の降旗は、ヴァイスのシャコンヌを良い音でしっとりと歌い上げていた。ただちょっとミスが多かったのが難点。三位の井野はサグレラスのマリア・ルイサとコストの舟歌を弾いた。他の二人に比べるとかなり素っ気ない演奏だったが、逆に素直だったとも言える。この三人にこういう順位がついたのは妥当だろう。

高学年になると、とたんに良い音を出す人が多くなる。一位の原田はパガニーニのソナタOp3-6を見事に弾ききった。歌い方が全体にドラマティックで、これ以上やったら大げさで下品に成りかねない、ギリギリな感じ。彼はこれからが楽しみだ。二位の坂本はスカルラッティのソナタK380を優雅に弾いていた。アーティキュレーションもなかなかしっかりしていてよかったのだが、トリルの最後が毎回同じようにもったりとしてしまうのはどうなのだろう。あれだけ何回もあるトリルを同じようにもたつくのは、最初からそう練習しているからだと思われるが、有名な演奏家達がどんな風にトリルを弾いているのか、少し聞いてみたほうが良いかもしれない。ウォルトンのバガテルから一曲目のアレグロを弾いた三位の近藤は、フォルテになると音が汚くなりすぎるのが気になった。またあちこちで不必要に間を空けすぎで、音楽が流れなかった。

中学生で一位になった飯野は、ドメニコーニのトッカータインブルーを弾いた。ダイナミックでくっきりした演奏で、この曲の雰囲気をよく掴んでいたと思う。ただ、最後の盛り上がりが今ひとつだったのが残念だ。二位の藤原はブローウェルのソナタから第2,3楽章を弾いた。2楽章はふくよかな音で見事に弾いていたが、3楽章になると、はっきりしない、鳴り切らない音が多すぎたように思う。その点、一位の飯野は速くなってもすべての音をはっきりと響かせていた。三位の片根はメルツのハンガリア幻想曲を弾いたが、最初のフォルテで力みすぎたのか、いきなり破裂したような音で始まってしまった。その後はもっとコントロールが効いていたが、それでもフォルテになってくると音が割れるときが多々あった。ただ、音が割れることを恐れてか、最後の方は消極的なクレッシェンドになってしまい、それはそれで印象が悪くなったかもしれない。

高校生の一位となった菅沼はなかなか聴き応えのある演奏だった。選んだのはトロバのカスティーリャ組曲の第三曲、そしてトゥリーナのセビリア幻想曲。カスティーリャ組曲の第三曲をこれだけテンポ感良く弾くのは、初めて聞いたかもしれない。ひとつだけ苦言を呈するなら、きれいなフォルテと汚いフォルテの使い分けは今ひとつだったこと。セビリア幻想曲などは、しばしば音が割れても良いから思いっきり弾いた方が良い部分があると、私は思うし、彼もそれをやっていた。しかしここのフォルテで音が割れるのはちょっと、というところでも、ときどき同じように突っ走りすぎていたように思う。

一位の菅沼が例年の高校生レベルで考えると非常に上だったのに対して、その他の人たちはむしろ例年より低いレベルだった。ソルのグラン・ソロを弾いた二位の星野は、メカニズムが不安定なところをそれなりに見せた上で、さらに途中で忘れたりもしたので、普通なら三位にも入らなかっただろう。他のコンクールだと、空位というのが結構ある。二位なしの三位が二人とか。GLCはそういう方式を採用していなかったので、今回は一位から三位まで出すこととなったが、そのようにしてはダメなのかという話が実際にちょっと出たのは確かだ。

大学生の一位となった門馬は、ロドリーゴのファンダンゴ、リョベートのスケルツォ・ワルツを持ってきた。このスケルツォ・ワルツは非常に見事だった。ただ、その完成度に比べるとファンダンゴはかなり下と言わざるを得ない出来だったのが残念。二位の伊藤はヴァシリエフの運命を弾いた。実は私はこの曲を知らず、ストップウォッチを止めるのにちょっとヒヤヒヤだった。というのも、知らない曲なので、明らかにここで終わるのだろうと思ってストップしても、実はまた続いたりということもありえるからだ。それはさておき、なかなか変化に飛んだ面白い曲だった。バランス的に1弦がちょっとキンキンして、低音が弱く、フォルテがヒステリックに聞こえる、最高の見せ場でミスする、あちこちで小さなミスをするなど、数々の難点はあったが、全体の音楽は流れていてよかったと思う。三位の森はゲーラの5つのプレリュードより波のサンバを弾き、これもまた良い演奏だった。ただ森が割りと単色の、ひとつの世界を作っていたのに対して、伊藤の創りだす世界観ももう少し多様だった。それが二位と三位を決めた要素だったのかもしれない。


さて、このように本選の審査結果が出てから、GLC賞は誰という話になった。GLC賞は各部門の一位の中から最優秀者に送られるのだが、実は今まで、なんとなく絶対的な基準があって、GLC賞を出さないことが何度かあった。しかしその「なんとなく絶対的な」という基準がはっきりしないので、そういう姿勢はいかがなものだろうという話があり、今年からは必ず出すこととなった。

そしてGLC賞を選出する際、考えられるのは菅沼と門馬のどちらかしかないでしょうという話になり、そこで多数決が取られた。その結果菅沼がGLC賞となったが、この二人の明暗を分けたのは舞台度胸なのかもしれないと思った。門馬は二曲目のスケルツォ・ワルツであれだけ良い演奏をしながら、一曲目のファンダンゴは今ひとつだった。それに比べて菅沼は、最初から最後まで自信たっぷりに弾いていたように思う。


最後にふと、こんな審査方法はどうだろうと考えたことがあるので書いておこう。GLCの場合、5人の順位を決めるのにその順位を書く。だから審査員が書く数字は1から5までだ。これをその倍の一位から十位まででつけて、各審査員の順位の平均を取ったらどうだろう。つまり、今年はレベルが低いと感じたら、最高位を六位、そこから順に七位、八位、とつけるわけだ。このシステムなら、最高位の人の平均が4点以内になっていなければ一位は空位とか、平均が2点以内の人しかGLC賞の対象とならないとか、明確な基準を作れそうな気がする。どうだろう?

ギター6重奏曲「飛翔」2012/08/11 08:52

あと一ヶ月ちょっとでこんなコンサートがあり、私のギター6重奏曲が演奏されます。

【第4回Passioneコンサート】
出演:谷川英勢,鈴木洋平,遠藤峻,濱口仁邦,中塚慧,美山華鈴
日時:2012.09月17日(月)
開場:13:30 開演:14:00
チケット:前売り2000円 当日2500円 学生1000円
場所:古賀政男音楽博物館けやきホール
曲目:
飛翔(冨山詩曜), ブルージリアン(C.アサド), チュニス チュニジア(ディアンス)
『くるみ割り人形』より(チャイコフスキー), ブラジル(ディアンス), May(丸本大悟)
ベルガマスク組曲(ドビュッシー), 7つの指輪(ジスモンチ), a Ground for 5 guitars(藤井眞吾), 他


この「飛翔」というのは元々成蹊大学ギターソサエティーのために作ったギター4パート+コントラバスの合奏曲で、約14分くらいの長さがあります。下記のような感情を綴ったわかりやすい曲ですので、是非聞きに来ていただけるとありがたいです。そもそも6重奏曲なんて滅多にやられないので、この機会を逃すと次はいつになるかわかりませんよ!


この曲は、あるとてつもない絶望に落ち込んでいる人が、希望を見いだし、自由へと解き放たれる過程を描いている。絶望の具体的な形は想定されていないが、たとえて言うならこのような感じだろうか。
ある人が過失で恋人を死なせてしまう。その恋人には寝たきりの母親がいて、その母親に罵られながらも、献身的な介護を続ける。そうして10年が経った頃、その母親はすでに認知症となって恨み言を言わなくなったが、その後もまだ贖罪の日々は続いていく。そんな感じの絶望と言えるかもしれない。

曲はひとつながりで奏でられるが、全体は大きく4つに分かれ、その中はさらに細分化されている。

○パート1
<絶望の日々>曲は重々しい「絶望の主題」によって始まる。
<行き先の分からない心>11拍子の不安なメロディー。
<あきらめ>変拍子と12音によって混乱が表現される。そこへ「絶望の主題」が戻ってくるが、その緊張感は和らいで終始する。

○パート2
<つかの間の安らぎ>一転してきれいな主題。これは心の奥底に潜む「自由への渇望」を表す。
<苦悩と焦り>8分の7拍子が「苦悩と焦り」を表現。この後、「自由への渇望」と「苦悩と焦り」の主題が交互に現れていく。
<自由への切ない想い><再び、苦悩と焦り>心の奥底では自由を欲しているのだが、そんな自分を許せない。
<どうしても自由が欲しい><自由の片鱗>隠しきれない自由への想いを少しだけ認め始める。しかし・・・
<激しい自己否定>どうしても自分を許せず、また完全な自己否定の世界に入っていく。音楽は喧噪の中、和音の連打によって終始する。

○パート3
<自由への誘い>「自由への讃歌」。これは絶望の人を救おうとする周りの声だ。
<迷い>周りから言われたからと言って、そう簡単には立ち直れない。音楽はすぐに不安な要素を持ち出す。
<昔の嫌な思い出>冒頭の「絶望の主題」が拍子を変えて再現される。
<今を生きよう>「自由への讃歌」がテンポを落とし、ピチカートの伴奏で控えめに奏でられる。
<自由へ・・・>全パートが力強く「自由への讃歌」を奏でる。

○パート4
<分岐点>音楽は突然テンポを増し、心が変化して来たことを示す。
<解放される心>分かりやすく軽快な「解放の主題」。
<昨日見た昔の夢>音楽はマイナーになり、未だに残る心の陰を表す。
<もう迷わない>「解放の主題」が再現。揺るぎなくなった心を強調。
<飛翔>音楽はどんどんと高揚し、心が完全なる自由へと上り詰めるのを表して行く。

どうして弾けなくなるの?: <音楽家のジストニア>の正しい知識のために2012/08/16 21:43

この本をすべての演奏家に送りたいです。一気に読んでしまいました。

この本の翻訳出版を実現したいという署名に参加したのは一年ちょっと前。それがこうして本になったのはとても嬉しいし、内容も期待を裏切らないものでした。自分が、いろいろな情報を元に考えてやってきた独自の回復法は、ほとんどすべてこれに載っていて、しかも有効だと思われる方に分類されていたのも大きな喜びです。症例が紹介されていると思わずうなずき、「うんうん、こんな変な症状が出るんだよ」とか納得したり、また、回復の過程でいろいろと不思議に感じていたことも、いくつかこの本を読んで解決しました。とにかくこの本は、演奏家のジストニアに関する深い考察に基づいています。

自分が治ってから、フォーカルジストニアは決して治らない障害ではないと思っていましたが、これを読み終わった今、ジストニアは基本的に治せる障害だというのを確信しました。自分の指・喉・唇などに不安がなくても、音楽家なら生徒や同業者たちのために是非読んでみてください。

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%97%E3%81%A6%E5%BC%BE%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%EF%BC%9F-%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E5%AE%B6%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A2-%E3%81%AE%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB-%E5%A0%80%E5%86%85-%E6%AD%A3%E6%B5%A9/dp/4276143365/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1344954143&sr=8-2