ジストニアはこんな風に治っていくべき2014/01/26 22:53

今日、私と同じようにジストニアにかかってしまったピアニスト、上園賢一くんのコンサートを聞いた。彼は発症して暫くの間演奏を休んでいたが、少し前から無料のチャリティコンサートを行っている。今までに何度も人前で弾いてきた曲でも、当日に弾けなくなるかもしれない、それがジストニアだ。そのリスクが有るため、だいぶ回復して弾けるようになっては来ていても、当日突然弾けなくなったら申し訳ないので、入場料無料のチャリティコンサートにしている。また、一曲ごとにトークをして神経を休め、症状が極力出ないように配慮するスタイルをとっている。

実はこのトークが秀逸で、彼の暖かい人間性がよく出ていた。今日は家族に関した話も多かった。息子の英語の成績がとても悪いので、一緒に英単語を覚えようと持ちかけ、実際にそうして、彼は次のテストに一番をとった。娘は留学のためにアルバイトしながら貯めてきたお金の一部を使ってクリスマスプレゼントを買い、両親、弟が寝ている間に、その枕元にプレゼントをそっと置いた。賢一くんのFBの書き込みには、奥さんに関するのろけ話がいっぱい! 私も、もしこれからでも家庭を持てるのなら、こんな家庭を持ってみたい。

誰か協力しませんか(笑)?

話変わって、最近ジストニアがどう治っていくべきなのかがわかってきた気がする。今日、賢一くんがステージで言っていたが、演奏家の指は本来、かなり無意識で動かなければならない。ちょうど歩くときに足をどう動かすかを考えていないように、そのレベルで指を動かす。それでこそ、色々と表情を乗せていく余裕が生まれるわけだ、と彼は言っていた。しかしジストニアにかかるとそれが変わる。実際、重症の全身性ジストニアの場合、歩こうとすると後ろに向かってしまうこともあり得る。

自分の場合、ひどいときは、1音弾くと、次の音は3秒後くらいでないと出せなかった。これが、メトロノームで数えられる程度のゆっくりさで確実に弾けるようになって来た時、私は治ってきたのを確信した。歩き方で言えば、注意して足を動かせば、何とかゆっくり前に進める感じだ。その確実性のある速度がだんだん上がってきて、非常に注意すればかなり速い動きもできるようになって来た。これが2012年のデビューリサイタルの頃と言える。しかし、ここまで言っても、速い動きの練習を続けると、何度も指が変になってきた。実際、昨年2月のコンサートの頃、pとamiの交互が出来なくなって来ていた。

それを再び克服してまた弾けるようになって来た今、色々と更にわかってきたことがある。昨年ティボー・コーヴァンの公開レッスンを受けた際、非常にゆっくりの速度から、メトロノームで5ずつ、速度を上げながら練習している方法を習った。さらに田口秀一さんの右手に関するアドバイスもあり、数カ月前から、とにかく正しいフォームでゆっくりという練習をやっている。それまではとにかく弾ければ良いということで考えていたが、あるときから、正しいフォームで弾けなければダメという制限を自分に加えた。すると、ある程度速い速度で弾いていると、だんだんと指がおかしくなって弾けなくなっていたのだが、これくらいの速度なら絶対におかしくならないという速度が見えてきたのだ。これが見えたら、その速度で徹底的に反復練習し、少しでもおかしくなってくるようなら速度を落とす、逆に大丈夫そうなら速度を上げていく、これが完治への道だと思えてきた。

実はこの練習法のようなことが、ジストニアに関する本に書かれている。ただ自分の場合、一時期はどうゆっくり弾いても弾けなかったわけなので、そういう治療法を書かれてもピンと来ていなかった。だが、ある程度治って、それなりに弾けているようにみえるくらいまで来たら、この練習法が非常に効果的だと思う。

そんな風に思う根拠として、ある事実がある。最近の自分は、初めて弾いてみる曲と同じくらい、昔、人前で何度か弾いた曲が弾けないのだ。つまり、なんと言うか、一度無意識化でプログラムされたものが全く壊れている状態と言って良いと思う。ただ、ジストニアにとってはそれが良いのだと信じている。一度無意識化まで徹底的にプログラムされた頭が、バグのために完全に暴走し、もはや回避プログラムではどうしようもなくなっている状態がジストニアだと思う。それを治すのには、一からの再プログラミングが必要なわけだ。

幸い、昔弾いたことのある曲の再プログラミングは、まだ弾いたことのない曲をプログラミングするよりは速い。全く話にならないほど弾けないのが、3日ほどであっと言う間に弾けてくる。こんな風にして、理想の速さで弾いても再び無意識のレベルまで持ってこれたら、今度こそ本当に、完全にジストニアが治ったと言えるのだろう。

今、それなりにゆっくりなら、無意識レベルまで指を持ってくることができるようになって来た。後少しだ!

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