スペインギターコンクール20062006/10/09 00:27

今回は予選を15人ほど聞くことができて、そのうちの3人が本選に残っていた。その人たちと自分の演奏を比較・検討してみると、こんな感じになる。

井上仁一郎さんはうまく弾いたから通った。それは明らかなのだが、他の前田司さん、鈴木洋平さんの演奏は、自分と同じように微妙だったと思う。ただ、彼らの場合は自信を持ってミスしているように見える。つまり印象的に、日頃は十分弾けているがたまたま間違ったという感じを与えるのだ。しかし自分の場合は、一抹の不安が大きくなってちょっと間違った。ということは、もしかしたら、間違えていないところでも若干消極的な感じを与える場面があったのではないかと思われる。

とは言え、それくらいならどっちが通ってもと最初は思った。しかしそこで気がついたのは、自分は負の遺産を持っているということ。今のように指が安定してきたのはここ一ヶ月くらいで、それまでにあちこちでさんざん指が動かないことを見せてしまっている。そんな人がちょっとミスると、当然「こいつ、また弾けねーな」と思うのではないだろうか。それが通った二人、特に前田さんの場合には、今までに指がしっかりと動くことを他のコンクールでアピールしているので、間違っても「たまたま間違ったのだろう」と思えるのだろう。

だから、自分が予選通過しようと思ったら、圧倒的に成長していることを見せつけなければならなかったのだ。しかし、それだけの技量は、まだないのかもしれない。

5月、ある人に「壊したのは人差し指でしょう」と言われた。なぜわかったのかと思い、右手iのタッチを改めて良く見たとき確かにおかしいと納得した。そこで再びiのタッチを変え、弾けそうになっていたいろいろなことがまた弾けなくなった。それから5ヶ月。新しいiのタッチは前よりも安定し、音楽に使えるようになってきた。今日はちょっとしたミスをしてしまったものの、人前で音楽を表現できる自信がついた日だった。

それにしても、コンクール自体のレベルがどんどんあがっているというのも、本選に行けなかった理由のひとつだ。おそらく、5年前の予選で今日くらい弾けたら、通っていたのではないだろうか。スペインギターコンクールはギターに復帰してすぐ受け始め、今年ではや5回目になってしまった。その間聞いてきて、自分もどんどんとうまくなってきたが、コンクールのレベルもどんどんあがっている。今年はついに、単に正確に弾くだけで表現をしていない、などという人は本選に出られなくなった。せっかくだから本選の感想も書こう。

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一位、前田司さん。
この人が一位というのはちょっと意外だった。でも結局のところ、難易度の高い技を、さほど面白くなくても無難に決め続ければ価値があるということなのだと思う。

二位、鈴木洋平さん。
この人の演奏はとにかく面白かった。次はいったい何をやり出すかという面白みがある。ただし、課題曲のソルは、調弦がめちゃくちゃで、表現もかなり古典から逸脱していた気がする。それでも二位にはいったのは、自由曲でスペインの心を見せつけたからだろうか。彼のラファガはすごくよかった。

三位、井上仁一郎さん。
私は彼が一位か、一位なしの二位だと思っていた。本選出場者の中で一番音楽的で、技術的にも破綻がなかった。ただ、うっかりど忘れ、というミスを繰り返したのが響いたと思われる。指ではなく、頭のミスというやつだ。でも個人的には、そんなうっかりミスはどうでもよく、彼の音楽性を採用したかったのだが、コンクールはそうはいかないらしい。

四位、竹ノ内美穂さん。
この人はCDを出してデビューしているということで、期待していた。しかし課題曲のソルがかなりダメだった。左手の抑えが不確かで、音楽も今ひとつ流れない。古典は苦手なのだろうか。

五位、飯野なみさん。
この人は繊細な演奏だった。女性らしい「たおやか」なファンダンゴとサパテアード。ロドリードのこの曲は、みんなバリバリに弾くのが普通。こんな繊細な、さらりとしたロドリーゴは初めて聞いた。だが、コンクールでそれは不利なのかもしれない。

六位、溝口伸一
今回彼は、時間オーバーということで自動的に六位になった。とはいえ、時間オーバーでなくても、上位3人を脅かすまでにはいたらなかったのではないかと、個人的にはそう思う。極めて輪郭のはっきりした演奏ではあるが、特に課題曲ではピント外れのところが目立った。
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てな感じだが、とにかくみんなうまかった・・・。

初めてあがらなかった2006/10/12 01:36

今日初めて、あがらないで人前で弾けた。そういえば、こんな風に全くあがらないで弾いていたんだ、とつい昔を思い出した。

今日はクラスタの飛び入りライブに初めて参加。最初に弾いたのは、スペインギターコンクールのためにさんざん弾いた「アラビア風奇想曲」だったから、落ち着けたというのもあったかもしれない。でもその次の「カタルーニャ」も、満員電車の疲れはあったものの(中央線って事故による遅れがあり過ぎ!)、練習のときと同じ感じで弾けた。

こんな風に人前でリラックスできたのは、5年前にギターを再開してから初めてのこと。やはり、この前のスペインギターコンクールで、何か一山超えた気がする。

このまま後戻りしないように行きたいものだ。

ライブ始めてみます2006/10/18 04:28

12/27に国分寺のクラスタでライブをやることにしました。
http://www.classta.com/

昨年5月に板橋で、会社を辞める記念にやってみたときは、まだライブをやるのは早かったなと思った。そして今年1月、7月に内輪の演奏会をやったときも、まだかなり不確かな演奏だった。

でもここ一週間くらい、ようやくライブをやってもいいかという気になったのです。まあ、それだけ自分の指が安定してきたというか。

ご興味とお時間のある方は、ちょいと聞きに来てみてください。下記のような曲をやる予定です。

(前半 クラシック)
椿姫の主題による幻想曲/アルカス
カタルーニャ/アルベニス
グラン・ソロ/ソル
アメージング・グレイス変奏曲/自作


(後半 ポピュラー)
ビートルズを数曲
「Illuminations」より/自作
聖者の行進


とりあえずこの日から始めてみます。新しい音楽人生を。

リセット2006/10/23 20:14

T社の企画会議が通らなかった。理由としては、以前に私がそのT社から出した翻訳があまり売れなかったから、というもの。

その翻訳は、T社が勝手につけたタイトルと、出版されたときの時代背景によって売れなかったのだというのは編集長に説明してあった。編集長もそれをわかった上で、リベンジのつもりで企画会議に出したのかもしれない。しかし列席していた他の人たちは、また失敗するんじゃないの、ということで退けてしまったのだ。

とはいえ早速別の、「この出版社から出せたらとても嬉しい」と思えるH社が原稿を見てくれることになった。結果が出るまで長ければ3ヶ月くらいかかるとのことだが、H社から出せたら、正直T社から出るのよりも嬉しい。しかも、これまた幸いなことに、T社に企画を預けていた間に内容は熟成し、つい先日最終稿と言ってもいい段階に至ったし、この本の出版をサポートするいくつかの出来事も起きている。あとは祈るしかない!

あらすじ
http://www.asahi-net.or.jp/~qr7s-tmym/contents.htm

のだめカンタービレの音2006/10/24 02:02

のだめカンタービレは非常に好きな漫画。それがドラマ化され、しかもその出来がいいので、先週今週と月曜日は幸福な気分だ。しかし、ドラマ中の音楽についてはまだ不満がある。

一週目。のだめの弾く「悲愴」。一番有名な二楽章を使いたいというディレクターの意向はわかる。だがそのために、特に曲の出だしはのだめの良さを出しにくくなっている。のだめの演奏は、めちゃくちゃで音も足したりするけれど魅力的な演奏のはず。それを表現するのにあの演奏では物足りない。3連符が出てくる付近でそれなりにのだめらしさを感じられたが、千秋が音に引き寄せられて聴きに行くあたりの演奏は、正直「わざわざ聴きに行く価値なし」の演奏だった。

モーツァルトの二台のピアノは、本番で千秋が自由にしていいと言ってから、しばらくは本当に自由で、のだめらしさがとても出ていた。だがすぐに普通っぽい演奏になってきてしまって、これは残念だった。

二週目。峰が初めてのだめと合わせたときの演奏は最高! 原作の雰囲気がよく出ていた。しかし、峰が千秋に伴奏を断られたときの演奏は、はっきり言ってこれでなぜ断るのか、といった、割と普通の演奏だった。こういうところでドラマの自然な進行が妨げられているのは惜しい。

峰が試験で弾いているときの千秋の独白は、曲の内容と合っていない。あんなピアノソロのところで始めないで、少し曲の途中をカットして、バイオリンのソロを勝手気ままに弾いている部分で独白が始まるべきだった。ちなみに峰のバイオリンが本番ではかなり普通になってきてしまっていた。

こういった要求をドラマで実現するのは大変すぎるのだろうか。言われたとおりに弾ける演奏家と、一人の優秀な音楽監督(私がやりたいくらいだ)が入れば可能だと思うのだが。天下のフジテレビ。なんとか次週からもっと音に表情を入れて欲しいものだ。