繰り返される夢と、果てしない疑問2009/06/22 23:35

私は昔から何度も「どうしても何かができない」という夢を見てきた。例えば、電話をかけなければならないとしよう。携帯がまだ無かったその頃、私は夢の中で電話ボックスを探して歩いていた。そこへ道端からマージャンの誘いがはいる。その甘美で魅惑的な誘いはどうしても断ることができず、仕方なく(?)付き合った私は、切りの良いところで何とか逃げ出した。そしてやっと電話ボックスを見つけたが、その電話機には故障中の貼り紙が。隣の電話機には延々と長電話をする男がいた。しばらく待っても一向に会話を終わろうとしないその男を、私はプロレスの技で投げることに決めた。その結果、ようやく電話がかけられるときになって財布を見ると、今度は小銭が無い。近くで両替をしてかけようとすると、電話機の数字の並びが変で、なかなか目的の番号をダイヤルできない。そんな状態で目が覚める夢を、中学の頃から何度も見ていたのだ。内容はその都度変わるが、どうしても何かができないという点で共通の夢だった。

30代後半にたまたま友人と夢の話になり、そんな夢を何度か見ていると言ったところ、彼女は二つの解決案を出してくれた。ひとつは他人の手を借りること。例えば電話がどうしてもできないとしたら、誰か他の人にかけてもらったらどうなのだろうか。もしくは別の手段、手紙にしてはどうだろうとも言ってくれた。それからしばらくしてまたこの手の夢を見たとき、私は友人の助言を実践することになったのだ。

プリント、印刷などを受けている、私が働いていたオフィスのシーンだった。受付で私に大判プリンタ出力を依頼した客は「急いでいるんだけどどれくらいでできる?」と聞いた。それに対して「そうですね。2時間はかかります」と答えた私は、すぐに作業にかかろうと受付カウンターを後にした。そこへ別な客が入ってくる。自分は急ぎの仕事を受けてしまったから誰か受付に出てくれ、と店内を見渡すが、どうやら誰も出られそうな雰囲気ではない。仕方なく受付カウンターに向かうと、この客がしつこく、どうでもよいことを相談してくるのだ。その受付がやっと終わり「やばい、かなり急がないともう間に合わない」と思いながら、私は自分の席に戻り、マックを操作し始めた。一応断っておくが、マックといってもマクドナルドではない。パソコンのマックだ。だが、そのマックのデスクトップは異様な画面になっていて、いったいどうやってプリントすれば良いのかわからない。それでもなんとかプリンタを選択し、プリントをし始めたと思ったら、今度はプリンタの紙が切れた。このときになってやっと、自分はいつもの「どうしても何かができない」夢を見ていると悟り、友人の助言も思い出したのだ。私は早速それを実行した。「○○さん、悪いけどプリンタの紙を補充して」と他人の手を借りる一方では、もう一台あった同じプリンタにプリントし始めた。つまり、他人の手を借りること、別の手段を講じること、この二つを私は即座に実践したのだ。その結果、無事にプリントが始まり、大判プリンタの印字ヘッドが動く、心地よいリズミカルな音が響く中で、突然扉を開く音が鳴り響いた。店内に入ってきたのは小さな男の子。私はなぜかそのとき、すべてを理解した。この子こそが、今入ってきたこの男の子こそが、自分が今までに何度も見てきた悪夢の根源なのだと。私は湧きあがる激情に身を任せ、その子の足をつかみ、彼を振りまわしてコンクリートの床に何度も叩きつけた。その瞬間、目を覚ました私の手には彼の体温が残り、初めて人殺しをしてしまった生々しい感覚は、しばらく消えることが無かった。

「やっちゃったよ・・・」

それ以来、この手の「どうしても何かができない」夢は見ていなかった。だから、きっとこの夢は「窮地に陥ったら代替案を考えたり、他人を頼りなさい」という知らせなのかと思っていた。

それがまたここ数日、2回も見てしまったのだ。そして今日、私はその夢の中で「これはあり得ない。これはあの、いつもの夢だ。目覚めなければ」と気づき、目を覚ました。数年前の、夢の中での人殺しに比べると、ずっとスマートな解決策だ。だが、果たしてこれが正しい解決策なのだろうか。

そもそも、この夢は私に、いったい何を訴えているのだろう?