第一回オールジャパンコンクール2015/04/19 23:20

金曜から今日までは、久々にクラシックギターを聞いていました。金曜日はグレコ君のコンサート。非常に面白い、ユニークでダイナミックな表現をする人です。土曜は藤元高輝、山田唯雄のコンサート。一部の二重奏だけしか聞けませんでしたが、なかなか素晴らしかったです。ちなみに一部で弾いたのは一曲だけ。藤井敬吾さん作曲の組曲『怒りの日』。全部弾くと一時間位の曲です!

そして今日はギター連盟の第一回オールジャパンコンクール。非常に興味深いのが、二次予選出場者12人中9人が女性ということです。クラシカルやスペインギターコンクールだと、例年女性は1割程度なので、ちょっと不思議な現象です。そういえば今年のクラシカルは出場者が例年に比べてかなり少ないです。クラシックギター界にいったい何が起きているのでしょう?

オールジャパンコンクールは、本選に行くと東京国際の1次予選が免除、本選で特別賞を取ると、そのまま東京国際の本選に行けるコンクールです。あらかじめ、本選は基本6人だけれど、6人に満たない場合があり得るとプログラムに書いてあり、実際その通り、本選に進んだのは3人だけでした。坂本和奏と宇田奈津美は聞いていて明らかに頭ひとつ出ていました。その次というと松澤結子か、もしくは古菅裕之という風に思っていましたが、松澤結子が通って、それで本選枠は終了となりました。聞いていて思ったのが、このコンクールの本選に行くには、クラシカルやスペインの本選に行ける実力が必要ということでした。

本選。最初に弾いたのは宇田奈津美。魔笛はとても正統的で良かったものの、アッシャーワルツは、あの曲に必要なおどろおどろしさがなく、さらさらと進んでしまった気がしました。また、アッシャーワルツの途中で忘れてしまったのも惜しかったです。それと、魔笛のような古典の曲を弾いているのに、スケールがまるでスペイン物を弾くようなタッチだったことも気になりました。こういう曲で、タッチの強いバリバリとしたスケールを聞くと、違和感を感じます。

松澤結子は、選曲と調弦のミスが大きいような気がします。一曲目が6弦をレに下げ、2曲目はルネッサンスリュート調弦、そして3曲目は普通の調弦でした。こういった組み合わせで弾くには、何度かその順番で、曲の途中で弦が狂ってくるのを合わせるところまで練習しなければなりません。もちろんそうした練習を少しはしたのでしょうが、実際は狂ってくる調弦に翻弄されて、不用意なミスが散見される演奏でした。

ただ、弦を早く安定させるための調弦方法を用いていたらもっと違ったかもしれないと思います。例えばミからレに6弦を下げる場合、私ならこうします。

◯最初にレよりもかなり下げる。
◯そこから上げていき、レのそれなりに手前で止める。
◯ナットと糸巻きの間を指で押して、音程を上げる。
◯それでも上がりきらなかったら、もう少し糸巻きを回して、レのほんの少しだけ手前で止める。

このように、完全には合っていない状態で弾き始めるのですが、実際には全く問題無いです。

ちなみに、招待演奏で弾いたグレコ君は、ちょっと左手が空いた瞬間に、演奏中にもかかわらず複数の弦を調弦していました。やはりここら辺がプロの証なのですね。ギターは難儀な楽器です。将来的に調弦をする黒子が認められるようにでもならない限り、演奏中に調弦する能力は必須なのでしょう。

最後は坂本和奏。彼女は順調に育っていると、今日つくづく思いました。女性らしい感性で、指も非常に良く動きます。もちろん、若い人なりの感性ではありますが(確かまだ中学生?)、素直で伸びやかな音楽が育っている気がしました。これからは、いかに楽譜の音価通りに弾かないか、様式感をどうやって出していくかに取り組んで欲しいものです。ソルのような古典の曲には現代の曲に比べて細かい指示が書かれていないので、短めの四分音符も、長めの四分音符も同じように記譜されています。それを弾き分けるようになってくると、また面白くなっていくことでしょう。

本選の結果は
1位 坂本和奏
2位 宇田奈津美
3位 松澤唯子
特別賞はなし
でした。

というように、久々にクラシック漬けの日々でしたが、最近私はポップスの方に走り、歌詞のある曲を書いて発表しています。それでも5/16は、自作のしっかりした、福島を題材にした18分程度のクラシックギターソロ曲を弾く予定です。

右に出してある予定のようにいろいろやっていますので、ぜひ一度足を運んでいただければと思います。みななさんとのユニットでは、クラシックとポップスの融合を目指します!

フィンガーピッキングコンテストとアコパラ2015/04/14 11:44

11日はフィンガーピッキングコンテスト、12日は島村楽器のアコパラと、2日連続でコンテストを受けてきました。

フィンガーピッキングは、カバーのYesterdayがうまく行ったら、次のオリジナル曲の演奏ではちょっと緊張してしまいました。とは言え、オリジナルを気に入ってくれた方もいました。私を気に入ってくれる方は、その独特な感じが良いそうで。

ちなみにこのYesterday、途中が5拍子なのですが、審査員の票はとてもわかれたようです。ある審査員はとても気に入ってくれて、無理矢理ではなく自然に5拍子になっているのが良いと言ってくれました。しかしある審査員は、そこまで難しくしなくてもいいんじゃないの?という感じ。

昨日は各審査員の方々に感想を聞いて回ったのです。別な人はまた好意的で、是非この方向性でまた受けて欲しいと言いました。一方、このアレンジではYesterdayの原曲の良さが出ていないとする審査員も。そして最後に、「あなたのように自分のスタイルを確立している人が、こういったコンテストを受けなくてもいいのでは」という審査員も。。。

賞は取れなくても、届く人には届いているので、めげずに頑張ります。これからの課題は、人前でいかに音楽に没頭できるかですね!
最優秀になってアコギもらいたかったーーーーー

12日のアコパラはとても楽しかった! こちらはMC付きで10分の持ち時間を自由に使えるコンテスト。フィンガーピッキングの場合声を出してはダメで、それがまた緊張を誘うのです。アコパラは全然落ち着いて、いつものように弾けましたね。こちらの結果はいつ出るのかわかりませんが、最終ステージまで行きたいものです。

クラシカルとオールジャパン2015/04/02 23:36

今年はクラシカルギターコンクールの応募者がとても少なくて、これはギター連盟のオールジャパンギターコンクールの影響ではないかという会報が昨日届きました。それを見ながら、そういえばオールジャパンは誰が出ているのだろう、とか思っていたら今日、ギター連盟からチラシと招待券が届きました。

もうすぐ、4/19(日)に2次予選と本選なのですね。第2次予選参加者は12名。そしてなんと、名前を見る限りそのうち男性は3名しかいないようです。これって珍しいですよね。

関西のコンクールだと結構女性がいるのですが、関東のコンクールではなぜか、ほとんど女性の姿を見てきませんでした。正確に言うと、高校生くらいまではそれなりにいるのですが、大学から一気に少なくなり、社会人が多いコンクールだと女性は10人に1人くらいだったのです。

ちなみにコンクールのゲストはGrecoくん。彼がこの女性ギタリストたちを見たらきっと喜ぶだろうな(笑)

第57回東京国際ギターコンクール2014/12/09 00:50

予選の後はMarko Topchiiのコンサートをパスして、13日のライブの合わせ。その後は美味しい焼肉を食べながら打ち合わせ。

さて、本選に行くと、昨日のTopchiiはすごかった、スタンディングオベーションも出たとか。。。ちょっとは聞いてみたかったんですけど、でも今回初めて合わせる曲もあったので、この練習は外せなかったんですね〜。それに、トモサンカクっていう赤身肉が、すっごく美味しいんですよ!

それはさておき、本選について軽く書きましょう。

本選は、予選で最高の演奏をしていたCameron O’CONNORから始まりました。今まで、予選ではとても素晴らしいけれど、本選はさほどではなかった人が何人かいます。そして彼も、その一人でした。。。
ロドリーゴの«ファンダンゴ»から始まったのですが、すごくよく整って、考えられた表現です。でもこの曲が、そんなきれいきれいの表現で良いの?と疑問に思いました。リズムよりは優雅さが全面に出た感じです。その後も聞いていくと、構成感はしっかりして表情もすごくて丁寧だけれど、ダイナミクスの幅が決定的に足りないのが際立ってきました。

次の齋藤優貴は、Cameron O’CONNORに足りないのはこれだ!と言わんばかりの、思い切りの良い演奏。でも、自由曲に選んだバッハのソナタ3番のフーガは、まだ全然消化できていないように感じました。

小暮浩史はバランスの良い選曲で、今までにも増して素晴らしい演奏。圧倒的なアピールはなかったものの、すべての時代を適切に、表情豊かに確実にまとめていました。ちなみに課題曲の演奏は、最後のThomas CSABAの次に良かったと思います。

次のXavier JARAは、まずとにかく凄い音色に惹き込まれます。それで奏でられるダウランドは、今までクラシックギターでは聞いたことのないくらい、独特で素晴らしいもの。その後彼は、よどみない、非常に高いメカニズムを見せつけてアピールしてきました。とは言うものの、ロドリーゴの«トッカータ»は無理だったのでは。この曲の実演はあまり聞いたことがありませんが、その中ではものすごくしっかりしてはいます。ただ、あの曲はギターでは到底不可能な、彼ですら弾けないレベルまで要求している曲なので、聞いていて不満でした。

山田大輔は本選に出た他の奏者と比べると、明らかに見劣りしてしまいました。しかも自由曲のひとつに選んでいたテデスコの«ロンド»は、前の日にCameron O’CONNORが好演していただけに、彼に比べると全然表現が足りないのが見えてしまいました。

最後のThomas CSABAは、ファリャの«ドビュッシーの墓に捧げる讃歌»は、以前聞いた小暮の演奏や、他の人の演奏より明らかに表現が足りなく感じます。バッハもそれなり。しかしモーの«ミュージック・オブ・メモリー»、そして課題曲は素晴らしかった。«ミュージック・オブ・メモリー»は今までに聞いて最高だと思っていたPetri Kumelaの演奏を超えていました。ただ、課題曲の譜面を把握している人が、彼は二小節飛ばした、と言っていました。

全部聞いてまず思ったのは、1位をとれるとしたら小暮浩史、Xavier JARA、Thomas CSABAの誰かだということ。小暮は他の2人に比べると、前に出てものすごくアピールするものが足りなく、はっきりした粒立ちの良い音でバリバリ弾くこともありませんでした。Xavierはすごいメカニズムでしたが、課題曲の表現では他2人に負けている気がします。Thomasはファリャがあまり良くないこと、«ミュージック・オブ・メモリー»で何度か忘れそうになったのか、流れが淀んだこと。課題曲の小節飛ばし。3人とも何がしかのマイナス要素を持っているわけです。

次にCameron O’CONNORと齋藤優貴が、どちらが上になるかわからないけれど、続くだろうと思いました。そして6位は山田大輔の予想。

結果は下記ですが、得点を見ると4位までほとんど差がありません。
1st prize Thomas CSABA 117.5
2nd prize Xavier JARA 117
3rd prize 小暮浩史 116.5
4th prize Cameron O’CONNOR 116
5th prize 齋藤優貴 106
6th prize 山田大輔 97

Cameronが予想より高く評価されましたが、他はすべて予想通りと言えば予想通りです。上位3人の混戦模様はよくわかります。Cameronのようなタイプが、そこと接戦するほど高く評価されたのはやはり、このコンクール審査の新傾向なのでしょうか。正直この4人ともリサイタルをして、観客を楽しませる力を持っているでしょう。特に、自分のマイナス要素を見せない選曲にすれば、納得のコンサートになると思います。

リサイタルとコンサート、そして東京国際二次予選2014/12/07 02:49

私の感覚として、リサイタルは「ここまで頑張りましたんで聞いてください。お金はいただけるだけで結構です」で、コンサートは「とにかく面白いものをやるので、それなりにお金を払って来てください」という感じです。そして私のやりたいのはコンサートですね。今日も13日のライブ(=コンサート)の練習をしてきましたが、かなり良い物を提供できそうです! まあ、でも、いくら本人に自信があっても、それが受け入れられるとは限りませんけどね(笑)

ちなみにこう考えると、コンクールもリサイタルの一つの形態かも。
今日は東京国際ギターコンクールの二次予選を聴きに行ってきました。

今年はスケジュールが合わなく、現代ギターの原稿を書かなくても良いので、ちょっと好き勝手に書いてみましょう。

今日は11時開演に間に合わなくてもいいと思いながら、実際少し遅れて行きました。というのも、一番手が例のCampanarioだったからです。ご存じの方もいると思いますが、彼は過去に二回、本選に行きながら、二回とも連絡を入れずに棄権しました。その彼が昨日抽選に来ず、その結果一番手に選ばれたということを知ってから、私は彼が予選に出ないと予想していました。その期待を裏切らず、彼は再びカンパナりました(=大切な場面をすっぽかすという、新しいギター業界用語)!

それはさておき、事実上の一番手となったCameron O'CONNORの演奏はすごかったです。今までにここまで完成度の高い演奏を聞いたことはほとんどありません。課題曲のバッハは、声部をよく弾き分けて、アーティキュレーションもしっかりしている。強弱とアーティキュレーションを使った同じフレーズの繰り返しも見事。しかも音色がとても整っている! 音色、表情、構成感などがすべて素晴らしいのです! テデスコの«ロンド»も、ここまで整って表情のある演奏を聞いたのは初めて。非常に知的で洗練された演奏でした。彼は当然本選に通りましたが、明日の演奏が楽しみです。

次のXavier JARAは、歳相応(93年生)に幼い演奏でしたが、メカニズムはしっかりしていて、本選に残りました。その次はThomas CSABA。最近名古屋コンクールで一位となり、素晴らしいと聞いていたのですが、最初に弾いた自由曲はとても素晴らしかった。ただ、その後に弾いた課題曲のバッハはあまり良いものとは言えません。やたら速いルーレや、重々しいジーグにはとても違和感を感じました。それでも自由曲と総合的に考えれば、本選に通ったのはうなずけます。

次は秋田勇魚。ちょっと不確かな発音が多く、それでももしかしたら通るかもとは思ったものの、残念ながら本選に進めませんでした。斎藤優貴は、若干強弱の差が出ていない、ちょっとしたミスを繰り返すということがあったものの、音色が整っているからそれでも通ると思っていたら、本選に残りました。

飯野なみは全体的におとなしく控えめな音に聞こえ、さらに弾くのが若干苦しそうに見えたのがマイナスでした。大西洋二朗は、出だしからしばらく最高だったのが、結構大きなミスをしてから崩れていった感じです。

次は小暮浩史。左手に起因する不確かな音がそれなりにありましたが(借り物の楽器だったそうで)、音楽の作りはしっかりしていて、また自由曲の完成度が高かったのもあって、予想通り本選通過しました。その次のMinseok KANGは、まだまだ音楽が幼すぎますね。彼は92年生まれとのことですが、彼に比べると93年生まれのXavier JARAは、ずっと大人だったように感じます。

山田大輔は外人勢、そして本選に通った他の日本人に比べて細かい音色のコントロールができていないようですが、それ以外の技術は確かなものです。自由曲としてアルベニスの«マラガ»を選び、ギターでは本来無理な内容を、それなりに聞かせていました。それは確かにすごいことです。でも、この曲を例えばオーケストレーションして演奏した時のことを考えると、彼の今回の試みは、一人でギターで弾いたということだけが際立って、それ以外の芸術的価値は見出し難いと言わざるを得ません。

最後の吉住和倫は、課題曲で大きなミスを何度かしたのが残念。自由曲のヴァシリエフの、特に«ワンダラー・イン・タイム»ではとても印象的な表現を見せていました。

という感じの二次予選でした。少しでも雰囲気が伝わったでしょうか。