ベトナムギター漫遊記4日目2006/07/09 22:40

国立音楽院の入り口
この日は朝から音楽院の試験を見学に。通常は外国人が試験を見学するなどあり得ない。現地に住む世話役渡辺さんが見学したいと申し入れたとき、それはさすがに断られた。しかし、彼女がかつて音楽院にピアノを寄付したことがわかると、試験を邪魔しない限りはOKとなったのだ。

音楽院に着いたのは朝9時少し前。
「どこの部屋でやるんでしたっけ」と私。
「昨日のマスタークラスの部屋のはずよ」と渡辺さん。
ボッティリエーリさんがマスタークラスをやっていたのは4階なので「じゃあ、4階ですね」と言ったところ、そうじゃなくて5階だと言う。

ええ、えええ?

5階というのはマシアーニさんと私が教えていた部屋。

ええ、あれはマスタークラスだったのですか?

どうやら私はマスタークラスをしてしまったようだ。気を取り直して5階の部屋に入り、試験の始まりを待った。「私語は厳禁」と校長先生から言われたと渡辺さんが言った。もちろんそれは当然だろう。無理に試験を見せてもらっているのだから。そして試験が始まった。

あの、そこの先生、携帯は止めないんですか。
えっ、話始めちゃうの?
ちょっとそこの先生二人も、私語やめなさい!
おいおい、生徒の演奏中に外に出て行くんじゃない!

う−ん、とても開放的な試験だ・・・。

この日、初級、中級の試験を聞いて感じたのは、和声感、テンポ感といった西洋音楽の基本ができていないことだ。4拍子の最後の拍を演奏しなければ、普通は身体がずっこけてしまう。それを平気で出来るのは、基本的な拍子を身体に感じていない証拠だ。この辺がベトナムギター界の根本的な問題だろう。テンポ感、リズム感については身に付いている人もいたが、和声感に関しては翌日の上級の試験をみても、実は先生ですら、西洋の伝統的な和声感がないようだった。

夕方まで試験を聞いたあと、夜はかなりうまいという女性ギタリストトゥーさんに会いに行った。旦那さんはイタリア人でヒルトンホテルのシェフをやっているということで、ヒルトンホテルにてディナータイム。エビとマンゴーの生春巻き、ビーフ・ポークの出汁によるフォー、竹の器にはいった香ばしいオーストラリアビーフ、バナナの葉に包んだ焼き魚などなど。

ディナーを食べたあとは、ホテルの一室にあるトゥーさんの部屋へ。こちら側がいつものように弾いたあと、彼女はタンゴアンスカイとワルツ・クリオロを弾いてくれた。確かに、技術はかなり高度でしっかりしたものがある。しかし、タンゴアンスカイはどう聞いてもタンゴではなく、それ以外の何かの音楽だった。その善し悪しは別として、少なくともタンゴというものを一度でも聞いたことがある人は、あのような演奏はできないだろう。

ベトナムのギター音楽はかなり隔離された中で育っている、そんな印象が強まって来た日だった。明日は上級の人の試験がある

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