第25回日本ギター重奏コンクール2013/06/23 19:18

先週重奏コンクールがありましたが、やっと書く時間ができたので、当日の印象など。

第1位は男塾(秋田勇魚・菅沼聖隆)。フリーバーズ・ベストデュオ賞も受賞。彼らの演奏は本当に見事でした。二人共とても実力のあるギタリスト。その二人が合わさるとどうなるのか期待はあったものの、実はあまりに違うタイプの二人が噛みあうのかどうかが不安でした。率直に言えば美女と野獣、もとい、超穏健派と超積極派の二人。普通に考えるとチグハグなものが出てきそうじゃないですか。それが、息がピッタリ。音量差も別に感じない。全く見事な演奏で、一位は当然だったと思います。

第2位はオンゲンカー(久保田琢斗・瀬戸純平・山口浩司・浦川一紀)。HARUMI賞も受賞。正直、彼らの演奏には結構なほころびが有りました。ただ推進力がすごくて、そういった欠点が目立ちにくい。コンサートで聞くとしたら、かなり楽しめる演奏です。こういうタイプは通常、コンクールでは上位に来ないのですが、そんな彼らが二位に来るというのが、このコンクールの特色でしょう。本当に音楽というのは、ただきっちりと楽譜通りの音を出せばよいものではないというのがよく分かる、そんな演奏でした。

第3位は荒木善彦・山﨑由規。彼らの演奏は昨年も聞きましたが、そのときよりもかなり進化した感じ。どちらがどちらかよくわかりませんでしたが、片方の人は若干メカニズムに不安があるのが見えます。でももう片方の人はとてもよい音色と高いメカニズムで、素晴らしい演奏をしていました。Duoとしての完成度も高かったので、入賞は当然でしょう。ちなみに、昨年は2位、そして今回は3位。このように順位は下がっているものの、演奏は今回のほうがずっと素晴らしかったです。つまり今回の重奏コンクールは、レベルが高かったのです。

学生奨励賞はギターアンサンブル「Beleza」(八木下愛海・高橋いずみ・小松江莉・青山梨花子・山岡達哉)。彼らの演奏はなかなか表現が大胆で、メカニズムもしっかりしています。ただ、なんとなく「一生懸命作っています」というのを感じてしまいました。それは独特の演奏スタイルにも寄るのかどうか。また聞く機会があったら、今度は目をつぶって聞いてみたいと思っています。それと、アルトギターという楽器は、もう少し魅力ある音が出ないのかとも思いました。

一般奨励賞はTAJIYAMA(多治川純一・山田大輔)。メカニズムだけなら彼らは実に見事でした。ただ、他の演奏者に比べて音が前に飛んでこないし、音色も魅力に乏しい、二人の音のバランスも悪かった。これらが解決されれば、十分一位を狙える技量だと思います。とは言え、魅力があって前に飛ぶ音というのは、一朝一夕では解決できない問題なのかも。そのままの楽器でそういう音が出せるとは限らないし…

その他に惜しかったのはDuo-Trussardi(谷川英勢・遠藤 峻)。彼らも例年なら入賞できそうな演奏をしていました。ただ、あまりにオーソドックスな曲を、あまりにオーソドックスに演奏するというのは印象が薄かったかも。他のコンクールならまだしも、このコンクールでそういった選曲・演奏は、評価が低い可能性が大です。もちろん、気をてらえば良いということではないのですが、このコンクールは細かくどこを間違えたかとかはあまり関係なく、より一般の聴衆にとって魅力的な、あまり専門的過ぎない、楽しい演奏が上位に来る気がします。さらに言うなら、「押し」だけではなく「引き」もある演奏でなければなりません。その意味で、彼らは完全に戦略を間違った感じですね。

コンクールには必ず、それぞれの特色・方向性があります。しかし、それに合わせて練習するのは嫌だという人は結構いるかもしれません。実際、コンクールの方向性と違っていても、とんでもなく素晴らしい演奏なら、それは間違いなく一位に来ます。でも、単に「素晴らしい」だけの演奏だと、方向性が違った場合、その順位は低くなります。逆に方向性があえば、「少し素晴らしい」だけでも上位に来られるわけです。コンクールを受ける理由が、自分の実力を客観的に見てもらうというのなら、こういったことは考えなくても良いかもしれません。一方、コンクールを受ける理由が、その受賞歴を将来の仕事に活かしたいということであれば、せめてそのコンクールの方向性がどうなのかを捉え、それに沿った対策を考えても良いのではないでしょうか。

コメント

_ シグマ ― 2013/07/25 12:52

良いコメントです。感心しました!

_ siyoh ― 2013/07/27 10:28

ありがとうございます!

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