ディクシャとジストニア2015/02/16 10:43

ディクシャとは、簡単に言うと、脳の回路を開く儀式です。元々はインドやチベットにいるマスターが、ただ一人の弟子だけに悟りを授ける儀式でした。これだけでは何がなんだかわからないと思いますが、興味のある方はネットで調べてみてください。ちなみに写真は、長い間途絶えていたこの儀式を復活し、世界に広め始めたカルキ・バカヴァンです。

昔からの友人が、こんなものが最近流行ってきたと教えてくれて、私は面白そうなので受けてみました。この儀式は、誰が行うかによっても結果が変わるし、そもそも儀式の後に具体的に何が起こるのかはわからないというものです。これを2人から受けたときには、特に変化を感じませんでした。しかし、死期が迫っていたある人のディクシャを受けた時、右手に劇的な変化が起きたのです。

時は2006年11月、アルベニスの«カタルーニャ»(https://www.youtube.com/watch?v=VXX9vMEOe-Y)なんかも人前で弾いていました。この曲をバルエコの演奏で初めて聞いた時、「こんな曲を弾けるギタリストが出てきたんだ。メチャ凄すぎる」と思い、自分がそれを弾けるようになるなど夢にも思いませんでした。

そんな難曲にも手を出していたのが、前述のディクシャを受けた日から、中指(m)の後に人差し指(i)を弾くのが、これ以上ないほどできなくなったのです。mを弾くと指がこわばり、その後1秒以上経たないとiを弾けないのです。«カタルーニャ»の特徴的なリズム「タータタッ」がまるっきり弾けなくなり、慌てて全て逆指にしたものです。

最初はいつもの、1,2週間経つと復活してパワーアップするという流れのひとつだと思っていました。しかしこのときは1ヶ月経っても全然良くなりません。結局それが治まった時にはかなりパワーアップしたのですが、それは半年近く経ってからでした…

このディクシャとギター演奏のわけの分からない関わり、あと2回出てきます。

2006年に再スタートしようとした頃2015/02/16 09:03

2004年に新フォームを目指し始めたのが、2006年にはある程度落ち着いて、コンクールなんかも受けてみました。

2月にモイスィコス国際ギターコンクールを受けた時には、ソルの«グラン・ソロ»を弾いていたし、バッハのBWV996,Preludeなんかも弾いていました。この頃録音したこのPreludeがあるので、リンクを貼ってみましょう。
http://www.asahi-net.or.jp/~qr7s-tmym/blog/PreludeNo1.mp3

こんな風に2月は弾いていたのですが、5月に友人の教室のピアノ発表会に呼ばれこれを弾こうと控室で弾いてみたら、全く弾けないのです。pとmを一緒に弾くと、その後にiを弾けなくなってしまいました。そこですべて運指を変えるわけには行かないので、その日は違う曲を弾かせてもらいました…

それまでは一本一本の指に不調が来ていましたが、このように2本の指を同時に弾いた後の不具合は初めてです。それはまたすぐ克服できたのですが、5月に私が弾くのを見ていた知人が、「壊したのはiでしょう」と言ってきました。その人は私の経緯を知らないのに、私の演奏を見てそう言ってきたのです。

言われてから改めてよく観察すると、確かに当時のiの動きは何か異常でした。他の指と違って、プルプルと震えながらタッチしているみたいです。このときからiの芯をしっかりさせるためタッチを変え、またいろいろな曲が弾けなくなりました。そしてこの矯正は意外に長く、数ヶ月かかることになります。

それでも11月頃にはなんとかなり、12月からはライブ活動を再開する予定をたてて、結構難しい曲も弾いていました。ところが…

繰り返される異変2015/02/14 05:55

ギターの練習を本格的に再開したのが2002年3月。2003年の後半はある程度人前で弾き、2004年1月に演奏活動を中断してフォーム改善を始めました。

この後2004年中は、いざというときは旧フォームを使ったりしながらも、新フォームがだんだんと安定し、また人前で弾く機会が出てきました。年末にあるパーティで弾いた時は、復帰後初めて指の不安に打ち勝つ演奏をできたと、過去のメモに書いてあります。

ところが翌年2月になって初めて、ある日今度は中指(m)がおかしくなりました。突然、信じられないほど力が入らなくなったのです。その日は「そんなはずはない、自分は弾ける」と言い聞かせた結果、5時間後くらいにはなんとかまた元に戻っていました。

再びmに力が入らなくなったのは4月でした。このときは回復に一週間くらいかかっていますが、なぜか回復後、以前よりもずっと各指のコンビネーションが良くなりました。

次は5月、今度は人差し指(i)が再び巻き込み気味になったのです! このときに自分の指の動きをいろいろ分析した結果、実は親指(p)に力が入らなくなったのだという結論に達しました。

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今までと同じように弾こうとすると弦の張力に負けて、それを弾けない。それでも頑張って弾こうとすると、pの力を補助するためiの指の巻き込みが起きる。
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実際、pをかなり意識して固定し、細心の注意を払って弾くと、iの巻き込みが無くなるのを確認しました。でもなぜ突然、そんな感覚異常が起きるのかは不明。このpに力が入らなくなった現象は、mに力が入らなくなったときと同じように1週間ほどで無くなり、その後は以前以上のコンビネーションが得られました。

この後7月に、それまではどんなに速くても大丈夫だったpimの動きが、ある日突然できなくなります。それを弾こうとすると指がこわばって固まってしまうのです。この症状も2週間ほど後には消失して、またパワーアップ。

どうもこの頃から、ある日突然何かができなくなって、それが1,2週間で回復すると、前よりもずっと楽に弾けるようになるというパターンが何度も起きてきました。いまだにこれが何を意味するのかよくわかりませんが、脳の神経回路の間違った接続がある日突然切れて、少しして正しい回路が作られるということなのでしょうか???

第4のきっかけ - ヘミシンク2015/02/13 16:49

第4のきっかけは、ヘミシンクという技術で今までよりもずっと速く指が動くようになったことです。ギターを止める前には決してできなかった速い動きができるようになったとき、目標が「プロの末席になれたら」から「プロ中のプロになる」に変わりました。こうして目標を高く持てたことは、その後続けていく上で大きな力となりました。

ヘミシンク(Hemi-Sync)は、両耳に左右それぞれ波長がわずかに異なる音を聞くことで、その差に当たる脳波が生まれやすいことを利用した技術です。単に瞑想用のものと、特定目的に対しての暗示をかけるものとがあります。この特定目的のCDを私はいくつか買って試していました。

その中にSynchronizingという、心と体のつながりを強化し微調整することによって、優れたパフォーマンスを発揮するためのCDがあります。これを聞いていたら、ある日ギターの練習時に、今までに無く速く指が動き、自分でもびっくりしたのです。

このCDは現在、日本でも購入できますが、暗示用のガイダンスは翻訳されていなく、英語のままのようです。

今まで述べてきた4つのきっかけと、冷静な自己分析によって、ギターの練習を再開してから2年後にはもう、バーで毎月演奏をし、それなりに難しい曲も弾くほど回復していました。とりあえず元のフォームで弾けていた感覚は思い出すことができて、一旦ジストニアの症状は消失した感じです。

とは言え、現在に比べると半分以下の音量でしたし、そのフォームだと弾けない曲があったため、私はその後演奏活動を自主的に中断し、昔ギターを止める遠因となったフォーム改善を再び始めたのです。ここからがなかなかつらい道のりでした。

練習を再開した頃2015/02/12 01:54

第4のきっかけの前に、今回は練習を再開した当時のことを書きます。

ここで少し、当時の右手フォームについて説明しなければなりません。私の右手フォームはかなり亜流でした。昔のフォームを写真に撮ってみましたが、見てわかる通り、親指(p)と人差し指(i)がくっついています。この2本がお互いに力を補い合って動いていたため、pを連打しながら高音が速く動く曲、例えばジュリアーニのいくつかの曲は絶対に弾けませんでした。

昔の先生は「そこまで弾けてるのだからそのままで良いではないか」と言っていましたが、私はもっといろいろな曲を弾きたくて、自分なりにフォーム改善を始めました。そして何年間か少しずつ改善していく中で、ある日決定的におかしくなってしまったのです。

ギターの練習を再開した際は、弾けないよりは良いということで、この昔の、元々のフォームで練習を始めました。そのフォームだとある程度ましに弾けましたが、それでも右手人差し指の巻き込みは相変わらずときどき起きます。私はその状態を自分なりに分析し始めました。

重いものを持って疲れている時
若干の緊張がある時

この場合に巻き込みがきつくなることが分かってきました。これに対して取り急ぎ、スプーンを曲げたときのことを思い出して「自分にはできる」と言い聞かせることをまず始めました。これが不思議なことに、重いものを持った日でも、「自分にはできる」「自分にはできる」と言い聞かせていくと、だんだん指がまともになってくるのです。この頃から自分の障害がかなり精神に関わるものだというのが分かってきました。

緊張については、どんな演奏であれそれをありのままにさらけ出し、それをなんとも思わない精神状態を努めて作りだすようにし、状態を緩和してきました。要は、自分を良く見せようとするから緊張するのだと思ったのです。

これでだんだんと弾けるようになってきてから第4のきっかけに出会います。